ガラスコーティングは国内で製造販売されている硬化型ガラスコーティングを前提として解説します。
ガラスというネーミングですが、まさか本物の「窓硝子」と同じ膜になると思っている人はいないですよね!? 硬化型ガラスコーティングの主成分は大きく分類すると「シロキサン」「シラザン」となっています。どちらもケイ素(Si)を主骨格としたシリコーン化合物ですが、ガラス(硝子)ではありません。

シロキサン系のコーティング剤の多くは、常温で加水分解し硬化します。無溶剤の商品が多く、手塗り手拭きのイージーな施工で、ガラス(硝子)ではなく、硬質プラスティックのような硬い極薄膜を形成します。コーティング専門店ではこのタイプの取扱が一番多いのではないかと思います。主骨格はケイ素(Si)なのでスケールは付きやすい。フッ素を添加し撥水撥油機能を持たせ防汚性能に特化したもの、カルナバ(ワックス成分)を添加しスケール防止性能を付与させたもの、紫外線吸収剤を添加し色あせへの耐候性をもたせたもの、などなど様々なスタイルで多くの商品が乱立しています。

シロキサン系のコーティング剤は当店でも扱っています。最近のものは様々な触媒を添加してスケールの固着もかなり低減されてきたと感じています。ただ、膜全体が加水分解によって固まる性質なので、当然ながら加水分解によって劣化もしていきます。膜全体が硬い性質なので経年で割れも生じるかと考えています。そもそもそういう膜性なので何年も持続するようなものではなく、当店では1~2年で塗り替えましょうと正直に伝えています。

シラザン系の代表は「ポリシラザン」。クォーツと呼んでいるものもありますね。20数年前にスプレーガンで吹き付けるコート剤としてリリースされ現在も流通しています。液中のポリシラザン含有率は1%以下、1000ml使用したとしても有効成分は10ml以下、空気中に拡散される量はいかほどに・・・ という考えと、完全硬化まで1ヶ月というポイントから当店では取り扱いしていません。塗装ブース完備の塗装屋さんでの取り扱いが多いのかな(ただし焼き付けても硬化はしません)。

ポリシラザンには種類があって、このタイプのものは触媒添加で常温硬化を可能にした分子の大きい無機ポリシラザンです。無機ポリシラザンは加水分解によって硬質で純粋なSiO2(二酸化ケイ素)になります。分子の大きい材料の極薄なので膜というよりは点接着だと考えるのが妥当。純粋なSiO2性質なのでやたらスケールが付きます。スケール防止対策として撥水機能を持つコート剤を上塗りしたり、無理やり親水にしてスケールを目立たないようにしていますが、そもそも無機ポリシラザンはハードコートや腐食防止対策として利用するべきものであって、愛車の美観を維持するコート剤ではないであろうと考えています。

この手のものは手塗りも出来るので、ディーラーコートなどの複層コーティングのベース膜として使われていますよね。硬質なガラス膜をベースに何ちゃらを上塗りしてみたいな。サッと塗って簡単に拭き上げられる手軽さと、吸着しやすい性質を考えてのプライマー的考え方ですね。

いずれにせよ、ガラスコーティングの多くは「硬さ」を売りにしてきました。硬いと言っても鉛筆硬度で表している程度の硬度ですからね。実際の硬さは極薄膜ゆえに被着体である塗装の硬さに比例しますし。まぁ、硬度ゼロの油脂系コーティングに比べれば洗車キズなども入りにくい特性はありますが、専門プロショップでも長年あれこれ不満をもって材料探しで迷走しているのは、キズよりもスケールの固着と陥没雨染みなのではないでしょうか!?

セラミックコーティングについては、海外からの輸入製品を前提にお話します。

世界ではシリコーンやフッ素を使うのは時代遅れだと説明している材料屋さんもいるみたいですが、ポリシラザンはシリコーンの一種じゃないんですかね!? フッ素も巧みに使っているところもありますよ。

海外製品がセラミックと名乗る根拠としては、有機ポリシラザンを原料として使用していることにあります。有機ポリシラザンは窒化ケイ素(Si3N4)に炭化化合物を架橋している構造になっているので、窒化、炭化、というイメージから「セラミック」と名乗っても嘘ではない、というのが本質だと考えています。いずれにせよ「セラミックス」の固体になるものでは有りません。無機ポリシラザンも窒化ケイ素(Si3N4)なのでセラミックと呼んでも間違いではないです。なので最近では日本製のポリシラザンコーティングもセラミックと名乗るようになりましたよね。

海外のセラミックコーティングの面白いところは、有機ポリシラザンを他の原料と上手く合成し、外人さん好みのツルッツルでテッカテカの超撥水コーティングとして作り上げていること。諸外国は日本と比べると「硬水」の国も多いので、もともとシンプルに雨染みなんぞ気にしない民族であるのでしょうが、そこはしっかりと水染みスケール対策として、スケールと結合しにくい原料と有機ポリシラザンを上手く架橋合成した膜性にしています。日本人は真面目にひたすら「硬さ」のみを追いかけ、海外製品は耐候性の良い膜を形成し、ツルッと感や撥水性にポイントを置いて設計されています。なので、セラミックコーティングはガラスコーティングと違って「カチカチに固まらないのよね」という話がでてくるのです。

ガラスコートはカチカチに固まって割れて粉が出るくらいだから、もっともっと硬いって言われているセラミックコーティングだったら、どんだけガッチガチに固まるねん!? って想像していたのでしょうね(笑)

もちろん海外セラミックコーティングもガラスコーティング同様に硬度◯Hと表記しています。中には日本のガラスコーティングのようなコンセプトで硬い被膜となるものもあろうかと。使用している原料が硬度◯Hだからと硬度表記するのもアリ、滑り性が高くて本来の硬度が計測できなくとも、出た数値が◯Hなら表記もOKと、まぁ~要するに何でもアリの世界っちゅ~ことですわ(笑)目に見える活字や言葉だけじゃ~何もわかりません。

海外セラミックコーティングが長期耐候性を謳っている根拠は、おそらく膜性にあると思っています。日本製ガラスコーティングは薄膜であっても硬い膜でガッチリ守ってやろうとの目論見(無理)ですが・・・ 海外セラミックコーティングは膜厚を上げれるゴム質のような柔らかく柔軟性のある原料に、硬い有機ポリシラザンを合成してちょうどいい塩梅に仕上げてます。◯年耐久と説明しているのは、◯ミクロンの膜厚をつけているのだから、経年劣化ではこれくらいの減退という机上の理論。実際の自然環境と車の使い方では何年も美観を維持することは到底ムリな話です。

耐酸性・耐アルカリ性も強調していますが、よく分かりませんねぇ。スケール除去剤の酸性ケミカルに全反応し破壊されるコーティングもありますから。ph(ペーハー)だけの問題じゃないってことです。

急速硬化で扱うのが大変だという話を聞きますが、これは単に認定店専売品にするための仕組みか、世界戦略をとって世界中に売っているので、低温・低湿度な地域での施工でもきちんと硬化が促進するように触媒を入れているだけ。高温多湿の場合は空調でなんとかなりますが、カラッカラの低湿度地域で、施工場の相対湿度を上げるってのはなかなか大変なんでね。濃淡のムラムラが出るっていう話も単なる強溶剤が原因かと。海外車両の多くは塗装密度が高く硬い塗膜が多いので、塗膜に結合させるために塗膜をわずかに溶かすための強い溶剤を入れています。海外のコーティング剤は海外の車両で適合をとっているので、軟弱な日本車塗膜や、研磨して弱くなっている塗膜に塗ってムラムラになるのは当然なのです。

これを、塗装に浸透して急速に硬化してすんごい硬くなるコーティング剤だと妄想している人も多いようですが、厳密には塗装に浸透するようなものはございません。

いずれにせよ、ガラスコーティングとセラミックコーティングには、そう大きな違いはありません。ちとレシピが違うだけ。国産ガラスコーティングは膜としての硬さを追いかけ、真面目に雨染み対策を行おうとしていて、海外セラミックコーティングは長く留まり、Siの欠点であるスケール固着が少ない膜性とし、滑り性を付与することで撥水性やつるつる感を上手く演出しています。

塗って出来上がったコーティング膜は目には見えません。硬さも見えない証明もできない、膜厚も同じ。目に見えるのは水の弾き方だけ。感触として人間に伝わるのは滑り感のみ。艶・光沢・輝き・・・コーティング膜をいろんな言葉で表しますが、本当に区別できますか?

反面、コーティングの結果はすべて見えます! 感じます! 汚れた・・・傷が入った・・・ 水を弾かなくなった・・・ 雨染みが出来た・・・ 色があせた・・・ すべて見えます!! ザラザラする・・・ 感じます! 硬いって言ったのに、長持ちするって言ったのに、保護できるって言ったのに、お客さまからの正直な言葉・・・悩まされますよね。

私もコーティングの仕事を始めてからず~~っと悩まされてました。お客さまだけでなく施工店も同じなんですよね。材料屋から良いことばかり聞かされて本当のところは何も教えてくれない。問題が起こって追求するもいつも曖昧にはぐらかされて。解決の手段は別の材料を探して切り替えるか、言い訳トークを上手にできるようになるかのふたつにひとつ。諦めるという手段もありますが(笑)

なぜ悩まされるかの答えはいたってシンプル、夢を見てるからです。上っ面の心地よい言葉に翻弄され、真実を見ない・考えないからです。私は言い訳するのも嫌で、あきらめの悪いしつこい人間なので、これまで色々と模索してきましたが、最終的には真実を知る=どういう組成で出来ているか、なぜそういう現象になるのかを知る他はないと思い開発に携わりました。これまで誰一人として根っこの根っこまで解説してくれませんでしたからね。

開発に携わり、これからは材料を供給する側の立場になるので情報はしっかりとお伝えしていこうと考えています。

PAGE TOP