コーティング業のはじまり

私がコーティングという素材に関わるようになってかれこれ25年以上の歳月が経ちます。
最近では、当店のような専門店はもちろん、ディーラーやガソリンスタンド等の多くで販売されるようになって、一般の多くの方に認知されるようになりましが、コーティングの歴史は意外と古く、この仕事の始まりは1970年代後半からです。
当時は、バブル絶頂期で、脱サラ、独立開業、スクーリング、全国チェーン展開と、誰でも社長になって毎月100万円の金儲けができまっせ! の宣伝広告が飛び交っていました。 クルマ好きだった私自身も興味を示したお仕事内容でした。
この頃のコーティング加工の代名詞は「1年間ノーワックス」。
クルマにはワックスを掛ける習慣があるなか、ワックスを塗ってゴシゴシ拭き取るという労力を、コーティング加工することによって、1年間楽らくカーライフを送りませんか!?という宣伝文句。 この時代にも「1年間保証」という言葉がすでに発信されていますね(笑)

当初のコーティングは「ポリマー加工」と呼ばれていました!
液剤の多くはアメリカからの輸入品。
輸入品と聞くだけで、何か凄そうだ!と皆さん興味を惹かれたのでしょうね。
プロによる何工程にもおよぶ作業でポリマーコートすると「つるつるピッカピカ!」。 ワックスと同様に「水玉コロコロの撥水」もポリマーコートのイメージのひとつ。
80~90年代までには多くのコーティング剤が輸入されました。 なんだか凄いネーミングのコーティングが続々と(笑)
手塗りタイプ、ポリッシャーでの擦りこみタイプ、いろいろありましたね。 当店が開業したのもこの年代です。

のりもの屋のコーティング(初期)

コーティング業務を導入するにあたり、当然のことながら比較と差別化を考えました。
すでにこの頃から、1年・3年・5年(保証)と言っていましたね。
1年程度しか持たないから、年に一度はコーティングしましょう!と言うもの。
半年毎にメンテナンス(有料作業)をし、3年間光沢保証(見た目だけ)すると言うもの。
専用キットで手入れをすれば、半年毎の光沢度チェックで3年間光沢保証するもの。
新車時に加工すれば、普段は水洗いで、1年に一回の点検で最大5年保証すると言うもの。
いろいろたくさんありました。
当店が導入したのは、グロス(光沢)チェッカーという機械で、半年毎に光沢を計測し、ある基準までを保証し、基準を下回った場合には再施工するという3年ものの商品。 専用キットの使用感も良くネーミングもロゴも格好良かったので人気でした。
1年ものが多いなか、3年光沢保証と言ったので、一般の方はもちろん、ディーラーや車屋さんにも説明しやすかったみたいで、たくさんのご紹介もいただきました。

ただ・・・仕事として毎日やっていると色んなことが見えてくるんですね。 半年に一回お客様と愛車を目の前にする訳ですから、多くの結果を知ることになります。 ホント綺麗に維持できている車。 なんとも無残な状態に傷や染みがついている車。
だけど、3年間光沢保証のシステムである光沢測定では、どれもOKな数値。 光沢OKは、OKで、OKなんだけど(笑)
これって本当に意味あるの!?と純粋に考えるようになりました。
何故キレイな車と、無残な車があるのか? コーティング剤の問題なのか? 塗装の種類や色は関係あるのか? 保管場所や使用状況によって左右されるのか? もしや、手入れをする人に問題があるのではないのか? いろんな事を考えましたね。勉強もたくさんしました。
そして出した答えは、保証システムをやめることでした。
実際のところ、売りやすさがあってご紹介いただいていた業者からの仕事は減りました。 自分自身が出した答えです。仕方がありません。
それよりも「愛車ずっとキレイ長持ち」のためには何が必要か!?の方が大切だと、更なる勉強に励みました。
のりもの屋の「こだわり」の原点はここにあります。

ガラスコーティングへの転換期

2000年には、それまでの常識を覆す「ガラスコーティング」の時代へと突入しました。
これまでのポリマーコーティングとガラスコーティングの違いは何なのか!?
新しい素材を知るためには、これまでの素材も同時に深く掘り下げる必要があります。
これまで日本で一番売れていたであろう「ペイントシーラント」については、分析結果も知ることになり、ポリマーコーティングについても理解できました。
ガラスコーティングと言われると、硬さや強さと、長持ちしそうなイメージを抱きました。 硬度○Hという表現にも凄く興味を惹かれましたねぇ。 硬さや厚みに関しては色んな意見や考えが飛び交いました。
販売元とも長期間にわたりお話しました。 学者レベルの方にも純粋な意見を頂戴しました。 そして現場でもアレコレ検証の繰り返しの毎日です。
「ガラス」と言われますが、硝子のように固まったものを確認することはできない・・・ 液剤を放置しようが、熱を加えようが、乾燥させようが、固まらない・・・ 皮膜として「見えない」。 なのに・・・ガラス・・・・
後に、固まるタイプのガラスコーティングが誕生してからは、この固まらないガラスコーティングは「ガラス系」とか「ガラス繊維系」と呼ばれるようになりました。 コーティングの結果としては、これまでポリマーやワックスに比べて「鉄粉」の固着は少なく、酷い水垢の残存も少なく、若干洗車キズも少なくなったような気がして、何よりも、再施工(メンテナンス)時の作業負担は軽減されたことは事実です。

ポリシラザンという物質

ガラス系コーティングを追及しているなか、「ポリシラザン」という電子機器の基盤の絶縁体に利用されている物質を自動車用コーティング剤として「薄めて」販売する「クォーツ」が登場します。 ただ単に薄めているのではないのですが、あえて「薄めて」と書いたのには理由があって、クォーツ液剤中の固まる成分は極微量の「0.5%」だからです。
クォーツは基本、スプレーガンで塗装するように吹き付けます。 吹き付けた液剤が硬化し「ガラスの皮膜が半永久に塗装を守る」と言われています。
普通車一台につき1リットル(1000ml)使用するらしいですが、スプレーガンで拭き付けると大半は空気中に拡散されます。
塗装の場合、上手な職人が低圧のスプレーガンで吹き付けたとしても、ボディーに乗っかるのは30%程度と言われていますが、1000ccの30%=300cc。
300mlの99.5%は揮発溶剤で、揮発してなくなるので、ボディーに残るのはわずか「1.5ml」(笑)
なぜ、このように微量なのか!?
理由は単純です! このポリシラザンは完全硬化すると本当に硬くなります。 原料の目の付け所は良かったのかも知れませんが、膜圧を上げると硬いので「割れる」。 走行するクルマには致命的です(笑)
また、厚く塗ると、光沢や艶が落ちたり曇ったりして美しく仕上がらない。 効果のほどは無視して、割れない程度に、そこそこキレイに仕上がるのが「0.5%濃度」。 有効成分は「ゼロ」ではなく、一応入っているので「ウソ」にはならない。 というカラクリです(笑)
当時、販売元から和歌山県紀南の代理店としてのオファーがあり責任者と商談しましたが、提出してきたのは「建築用の30%濃度」の液剤データー(笑) わたしは、事前調査をすませていたので、あれこれ突っ込んだ質問をするとタジタジ(爆)
要するに、ポリシラザンを入手し、製品化するのに金を突っ込んだ以上、どのような製品であれ、売らざるを得ない・・・と言うのが最終の答えでした(笑)
ポリシラザン単一では、ボディーコーティングとしての意味を成しません。 デメリットの方が多いと当店は考えています。
唯一、声を大にして「買う意味がない」コーティングだと私は断言しています。

固まるガラスコーティングの時代へ

クォーツ登場以来、「固まるガラスコーティング」が加速します。
「オルガノポリシロキサン」という物質を主体にした「無溶剤」のガラスコーティング
これまでのコーティングは、油脂に混ぜられていたり、溶剤に溶かしこまれていましたが、今度は溶剤ナシです。 液体がほぼそのまま固まっちゃいます!
これは業界のみんなが驚いたと思います。
施工も、手塗りで簡単! ムラも出来にくく、キレイに仕上がるので、現在のコーティングの主流はこれです。 ちょっと味付けを変えると「超撥水」「撥水」「低撥水」と変化もつけられます。
IPA(イソプロピルアルコール)での希釈は、溶剤に当たらないので、無溶剤としてウソではない販売が出来るという情報も聞きました。
無溶剤か溶剤入りかは問題ではなく、薄めることが出来るという事が解ると、一般ユーザー向けにネット販売したり、最近ではディーラーでも同様のモノが扱われるようになってきた背景がうかがい知れます。

誇張されるガラスコーティング

最近では、無溶剤のガラスコーティングの派生として、海外からも色んなコーティングが輸入販売されています。
ガラスというネーミングではなく「セラミック」。 これもいかにも「硬そう」です。 9Hという表現をしています。 鉛筆硬度の9Hか、石の硬さ(モース硬度)9Hなのか(笑) 「硬い」っていうイメージを持たせたいのだからまぁ~いいじゃないですか(笑)
ライターのお尻のプラスティックのところで、セラミック加工したボンネット半分をガンガン叩いて「ほら!キズ入らないでしょ!?」のパフォーマンスもイメージ戦略なのだから、見ていて面白いよねぇ~~。
台湾を発信として、世界戦略で動いています。 良く似たコンセプトで名前が違う兄弟ものの見かけます。 世界戦略で動いているだけあって、プロモーションは絶妙です。 なかなか日本人には真似できませんよねぇ。 日本で期待できない部分を、海外の戦略を頼りにしたい気持ちも分からんではないです。
でも、この発売元・・・・
キズが入っても復元する「セルフフィーリング」タイプのコーティングも併売しています。 何故・・・・・!?(笑) 次はどんなの出てくるんでしょうねぇ(笑)
また逆に、日本産のガラスコーティングが東南アジアに多く輸出されています。
中国産らしきモノと合わせると、東南アジアのガラスコーティングの種類の多さには驚きます。中身はほぼ同じモノなのに・・・と思うと笑うしかないですね。
コーティング剤は、一般ユーザー向けの商品も、プロ用の材料も、すべて容器に入った液体です。見た目では何の違いもわかりません。
かなり掘り下げて勉強しないと何もわかりません。 メーカーも発売元も、本当のことはなかなか教えてくれません。 自分もしっかり勉強することも大事ですが・・・後は人とのめぐり合わせだけですね。
単なる金儲け主義の「物売り」と付き合うだけでは真実はわかりません。

歴史の流れと進化!?の矛盾

年代ごとに新たな材料が続々と投入されてきましたが、決して古いものがなくなって、全て新しいものに入れ替わったかというと、そうではありません。
巷にあふれる工業製品のほとんどは、新製品に代わったりバージョンアップすると機能や性能がアップしますが、コーティングには残念ながら当てはまりませんね。
古いものが悪く、新しいものが良いとも限りません。 良くも悪くも、販売元は売れる限りはず~っと売り続けます。 いろんな施工店がいるのでバイヤーとしてはありがたい限りですね(笑) で、売れなくなるとお色直しをして別の販路を開拓して生き残ります(爆)
施工店にとって大切なことは、新しいモノにただ飛びつくのではなく、それぞれのコンセプトを本当によく知ること!と、私は考えています。
これが施工店の一番最初で、かつ最も重要な仕事だと私は考えます。
でも・・・みなさんあまり興味なさそうなんだよね・・・・
不思議でなりません。

最後に

長文を最後までお読みいただいてありがとうございます。
ざっと、コーティングの歴史を書き下しました。 単に「年表」にすれば良いだけですが、あえて活字にしました。
他のページ「コーティングの真実」でも、さらにその使用方法やら売り方をすべて掲載していますので、また時間のある時にでも一読くださいませ。