磨きとは

汚れて傷んだ塗装を美しく綺麗にみえるようにすることを「磨き」と呼んでいます。 世間一般では洗車したりワックスを掛けていることも「磨いてますなぁ~」と言われたりしますが、ここでの磨きは「ポリッシャー」という機械で「コンパウンド」と呼ばれる研磨剤を使用して塗装面を研磨して(削って)美しく見せることとします。 ポリッシャーは、一方向に回る「シングルアクション」と、細かくブルブル震えながら回る「ダブルアクション」や「ギアアクション」などの回転の仕方で数種類にわかれます。 コンパウンドも研磨剤の粒子の大きさや特性によってたくさんの種類があります。

磨き作業の発祥は、塗装屋さんの塗装修理後の仕上げとして、ブツ(ホコリやゴミの跡)取りや塗装肌の調整および艶出しとして古くから行われていた作業からきています。 同じような機材を使用して、塗装屋さんの仕上げ磨き以上に美しく磨き上げることがコーティング屋の磨きです。 コーティング屋の磨きは塗装屋の磨きとレベルが違う!という人も居ますが、それはフィニッシュポイントの違いだけです。 塗装屋さんでも追い込んでコーティング屋並に仕上げるところもありますし、コーティング屋でもアラの多いところもあります。 使っている機材の違いで多少の差異はありますが、仕上がりの違いはほとんどの場合「人」です。

磨きには、何の決まりも基準もありません。 塗装面の汚れや傷み具合はクルマごとに違います。 塗装には柔らかいものもあれば硬いものもあり、キズなどが見えやすい色や見えにくい色もあります。 どこまで綺麗にするかはお店が決めることではなく、一番はお客さまの要望です。 細かなことまで気にする”こだわり”のオーナーさまもいれば、パッと見がキレイになれば大満足な人も居ます。 塗装の状態とお客さまの要望をもとに、機材の組み合わせと工程数を導き、一台ごとに作業プランを提案しお見積りすることが理想なので、当店では現車確認が必須となります。 一部分を「お試し磨き」してフィニッシュポイントの確認をしていただけたら、より正確なお見積と満足度が高くなることは間違いありません。

磨き職人には、資格も試験も何もありません(一部の協会で資格(級)制度をとっているところもありますが後ほど記載します)。 機材さえ用意すれば誰でも今日から「磨き職人です!」と名乗ることができます。 自由な業界です!(笑) 「プロの磨き」「卓越した磨き」「こだわりの磨き」などなど、どんな表現を使って自画自賛するのも自由です。 もちろん上手い下手のランクもありません。 ホームページを見たり人に聞いても愛車での結果はわかりません。 なので、どのように適正な磨きをしてくれるお店を判断すれば良いのかを伝授したいと思います!

磨き専用ピットがあるか!?

屋外や軒下などの吹きっさらしで磨くようなところは論外! サッシやシャッターで仕切られた建物内での磨き作業は原則。 ピット内は「ブラックピット」であることが理想で、塗装面を確認するための照明ライティング設備は必須。 HIDやLEDなどの特殊照明もないお店は話にもなりません。 今のところHIDランプは最強(最恐)です。 当店では25年以上HID光源単灯でライティングチェックしていますが、「磨き屋殺しランプ」と言われるくらい塗装状態がハッキリ見えます。 見えすぎて仕事が終わらないくらいなので・・・こんなライトで仕事したら死んじゃいます・・・って他店の反応からそう呼んでいました(笑)

ライティングチェックでもうひとつ重要なことはピットの内装です。 先ほども記載した「ブラックピット」。当店は床以外、壁面も天井も「ツヤ消しブラック」です。 濃色車はもちろん、淡色になればなるほど周囲が暗くなければ塗装面を正確に見ることができません。 なので、壁面に窓があって外光が射し込むようなピットではライティングの効果も激減してしまうのでアウト~~! あっちにもこっちにもいっぱいライトをつけて目がチカチカするようなピットで磨いているアンポンタンも居ますが・・・単灯であれば本来見えるはずのキズが、あっちこっちから照らされることで相殺され、何も見えなくなってしまいます。 HIDが良い!と聞いたからとはいえ・・・数多くつければOKなんてものじゃぁないし(笑) ライティングは角度や距離が大事なんですがねぇ!

塗装をどれくらい知っているか!?

塗装はすべて同じではありません。 自動車メーカーごとに塗装は違うし、同じメーカーや車種・色でも違います。 塗装の硬さ・柔らかさ、密度、これらは新車時と経年劣化で違いもでます。 再塗装している部位があれば違いもでます。 なかには特殊な、自己修復タイプ(太陽熱で微細なキズが消えると謳われている塗装)もあります。 柔らかい塗装はキズも入りやすいが、キズを消すことも簡単(仕上げはシビア)。 反面、硬い塗装はキズも入りにくいが、キズを消すのは超大変。 お問い合わせ時や現車確認時に塗装についてのコメントが無いようなお店は要注意。 「黒は大変なんですぅ・・・」くらいは何処でも言うだろうけど、毎度毎度どんなクルマがきても同じパターンのやっつけ仕事で終わらせて、出来なかったことは色やクルマのせいにする半端者もいるのでご注意を。

磨きを誇張する施工店!

磨く・磨かない、どこまで磨くかは、お客さんとの対話で決まるもの。 うちは新車でも磨くんです~!と、張り切って言うお店もありますが、状態が良ければ磨かずにケミカル下地処理だけで済む場合もありますし、コーティングを塗るにあたって、よほど邪魔にならない限りは、お客さまが低予算で済ませたいご希望があれば、磨きは省略することもできます。 ここで重要なのは「職人の目」です! きちんと塗装の状態を把握できる「目」を持っていなければ成立しません。 なんでもかんでも削りったおすくらいの勢いで磨きを論じる人もいますが・・・脳みそだいぶ古いね(笑) 究極のコンクールコンディション仕上げ(ほとんどの人には見ても判別できないレベル)の仕事から、ご要望に応じてどのようにでも作業内容を調整して仕上げるのが真の職人の仕事だと当店は考えています。

どのような機材を使用しているか!?

塗装の状態とフィニッシュポイントに応じて、どのようなポリッシャーとバフと研磨剤をマッチングさせるかがポイントで、塗装をできるだけ削り落とさずに美観を整えながら美しく仕上げるかが重要。 一度削り落としてしまった塗装は二度と元に戻すことはできないうえ、削れば削るだけ塗装は軟弱化し劣化が促進します。 かつてシングルポリッシャーしか無かった時代は、最初に粗い研磨剤でズコォ~ンと削り落とし、徐々に研磨剤を細かくして仕上げていく塗装に負担がかかる手法でしたが、近年では「磨き」に特化したサプライヤーの登場で、塗装に負担をかけない徐々に塗装を研いでいく(といでいく)ような研磨システムが主流になってきています。

なかなか「どんな機材を使ってる!?」とは聞きづらいですが、作業場をチラっとでも見学させてもらえばラッキーです。 機械やケミカルと、重要なのは磨きに使用する「バフ」の管理がきちんとしているかどうか。 毛が生えているタイプのバフとスポンジタイプのバフがありますが、バフの洗浄機などがあって、いつもクリーンなバフで磨いていることがポイント。 目詰まりしてガシガシになったバフで磨いたらキズまみれにしているのと同じ。 専門店ならそんな雑なことはしていないでしょうが、塗装屋や車屋さんで磨きしているところは要注意でっせぇ~!

一部の協会で資格(級)制度

まだやっとんの!?ってのが本音です(笑) 塗りもの協会という名称なのに塗りものに関しての活動はほとんどなく、確かに磨きは重要なんだけど・・・磨きの認定&級資格制度を一生懸命やってましたねぇ。 かつては私も誘われましたが・・・「アホくさっ!」ってのが結論です。 もともとは塗装屋の磨き仕上げに特化した研磨システムだけにこだわって(最良という意味のこだわりではなく、単に出会いがそこしかなかったか、お付き合い)とても理解できない時間制限つきの技能試験や、磨きの数値化とか言うてはりますけど・・・ ボクニハワカリマシェン(笑)

他にも色々と協会だのグループがあるようですが、客観的にみれば ”社員教育用” でしょ!? って感じですな。 職人ってのはなかなか育てるのは大変です。 一通り作業を任せられるようなところまで持っていくのは一苦労でしょう。 従業員に、何かしら基準を作って、ステップアップで自信を持たせ、技術レベルを平均化したい、って事は理解できます。 あっ!だから前回のお誘いの時は講師としての依頼だったのね(笑) 世の中のお客さまのために!とか、この業界で働く人のために!とか色々と理想論を唱えていましたが・・・ 当店にこられるひとりひとりのお客さまの満足が一番ですからぁ! 廃業するまで僕にはそんな暇はありませぬ(笑)